• 2020.10.21
  • コンサルタントvoice

ブライダル業界M&Aにおけるデューデリジェンスの特徴

 

 

ブライダル業界のM&Aでは、会社譲渡(株式譲渡)よりも圧倒的に事業譲渡の数が多いです。

理由のひとつとして、ブライダル事業は結婚式場が1つの事業単位としてほぼ独立しているケースが大半のため、事業(関係会社との契約、人員、資産)を切り離し易いためです。

 

基本合意書締結後に事業を引継ぐことを前提として【デューデリジェンス】という事業内容の確認作業を行います。
例えるなら、人間ドックを受けるような、サッカー選手なら移籍する前にメディカルチェックをするようなイメージです。

 

チェックする分野は、大きく分けて「財務」「法務」「ビジネス」の3つです。

 

「財務」チェックは、買手の財務担当者と買手が依頼する公認会計士、税理士等の専門家が実施します。
過去の財務データに誤りがないか、買収後に発生が予想される大きな支出等がないか、建物や装飾品・大型備品・厨房機器等の資産価値が簿価に比べて適切かどうか等をチェックします。

 

「法務」チェックは、買手の法務担当者と買手が依頼する弁護士等の専門家が実施します。
衣装店や写真店等の委託先との契約が適切で将来的に訴訟や不利益等のリスクがないか、従業員との雇用関係は適切か、未払い残業代等のリスクはないか等をチェックします。

 

「ビジネス」チェックは、買手の役員、部門責任者等の実務責任者により、宣伝・接客・予約・施行の流れの中で、どのような方法をとっているのか、買手のノウハウ導入により実際に収益性を高められる見込みがあるのか等をチェックします。

 


デューデリジェンスにおいての注意点は、実務を把握した社員が対応できない点です。
社員に通知するのは最終契約書が結ばれてからとなるので、それまで売手としては、通常、社長と限られた役員のみで対応するケースがほとんどです。

 

他にも売手としての注意点は、買手の担当者から質問や確認を受けた事項について、正直に全て回答しなければならないことです。
なぜなら、多くの場合、最終契約書には、「譲渡後に売手の提示した資料や回答内容に意図的な間違いがあったことが判明した際は、それによって生じた買手の損失以上のものを売手が売却後長期にわたり主に金銭で補償しなければならない」ことが記載されるからです。 
一方で、買手が確認すべき事項はデューデリジェンスの中で全て確認する義務があり、確認漏れの事項に対しては、売手は責任をとらなくても良いということになります。

 

 

デューデリジェンスによって問題点が発覚した場合、譲渡金額の調整等によって基本合意書で合意した条件の修正交渉がなされます。
その際は、仲介事業者が間に立って、一般のケースを基本に両社間の落としどころを調整していくことになります。
ここでもやはり、仲介業者が「ブライダルビジネスを熟知しているか」や「ブライダル関連のM&Aを多く経験しているかどうか」が大きく影響します。
最終的に、問題点について両社間で妥協点が見られた際に、譲渡契約書(法的制約あり)を締結することになります。