• 2020.10.26
  • コンサルタントvoice

ブライダル施設M&Aにおける最終契約からクロージングまでの留意点

 

 

 ブライダル施設のM&A(事業譲渡のケース)においては、最終的な全条件を書き記した契約書の締結により、売手の譲渡と買手の譲受について双方に法的な義務が生じることになりますが、まだ売買は完了しません。当事者以外の第三者や法的機関に受入れてもらうという最終作業が残されています。
 ここまでM&Aは、通常当事者間のみで秘密裏に実行されるのですが、この段階で関係者への公表が必要となります。

 株式譲渡によるM&Aの場合は、株主が変わるだけであり事業主体の変更がないことから、第三者や法的機関の承認は基本的に得る必要がないケースが多いのですが、ブライダル施設の事業譲渡の場合、売手会社と衣装店や写真店等の委託先会社との契約を改めて買手会社と委託先会社との契約として結び直さなければならないのです。

 従業員の雇用についても同様で、建前上はプランナーやシェフ等の施設運用に携わる従業員は一旦売手会社を退職し、新たに買手会社の社員として入社することになります。

 また、施設が賃貸の場合は、家主とも新たに契約を締結し直す必要があります。賃貸借契約のまき直しの際に、家主から契約条件の変更申し出があるかもしれません。これまでよりも高額の家賃設定を強く依頼されたり、契約期間の修正がなされたりして、最終契約書の前提条件と異なる場合は、買手は譲受を受入れないことが可能となります。その他、不動産会社が新たに買手に所定の仲介手数料を請求してくるケースがあるため、こういった事項にも注意が必要になります。

 このようにいくつかある不確定要素の中で、最も注意が必要なのが、従業員の意向です。通常従業員にとっては、突然所属会社が変わることをほとんど予期していないため大きな戸惑いが生じるものです。また、ブライダル施設譲渡の場合の買手の最重要条件として「従業員の引継ぎ」が設定されるケースが多いため、キーマンが一人でも移籍を受入れない場合には、M&Aの成約が流れてしまう可能性もあるのです。

 このような一連のプロセスはクロージングと呼ばれていますが、最終契約書に調印してもまだまだ安心できないことも多く、こういった課題を事前に把握したうえで、クロージングがスムーズに行われるように、業界経験の豊富なM&A仲介会社に依頼することは大きな助けとなります。

 最後に、クロージングが無事に行われて、M&Aが成約した後で、どうしてもデューディリジェンスで確認漏れしていた事項等が出てくることもありえます。そういった際にもM&A仲介会社が中立の立場で両社の主張や言い分を元にした公正な解決の手助けをすることもできるのです。